DIPROニュース

2019

4月号2019.4.10 公開

BOM再構築に立ちはだかるハードルを越えるために

はじめに

ものづくりで利用される製品・製造・品質・アフターサービス・原価などの情報は、それらの情報を集約し制御する中核となるBOMによって流通・管理することにより企業内を横断してつながり、これを企画、設計、生技、生管など各部門で活用することで、経営課題の迅速な解決をも可能にします。本稿では、そんな役割を担うBOMの再構築に関わる進め方をご紹介します。

なぜBOM再構築を図るのか?

昨今のBOMの再構築の理由としては、以下のようなものがあげられます。(表1)

1)老朽化に伴う再構築
2)グローバル化に伴う再構築
3)BOMを基軸(INDEX)とした技術情報管理の高度化に伴う再構築
4)図面文化からの脱却(デジタル化)に伴う再構築
5)企業間提携・合併に伴う再構築
6)法規・国際標準準拠に伴う再構築
7)設計部品表と生産部品表の接続性に伴う再構築
8)多品種少量生産、多様性への対応に伴う再構築
(表1)BOM再構築の理由(例)
1)「老朽化に伴う再構築」

長年運用していく中で、繰り返し行われてきた見直しや改善によって複雑化したシステムのシンプル化や少子高齢化による要員不足、TCO削減、自然災害対応などの観点から、信頼性、安全性、可用性、運用性などを見直す必要があります。

2)「グローバル化に伴う再構築」

単一拠点での設計・製造・調達から、市場の拡大や海外生産化に伴う複数拠点での対応へとビジネスが急速に変化しています。そのため、設計・製造・調達ならびに見積もりに関わる情報共有や意思伝達の精度向上およびスピードアップの仕組みが必要となります。

3)「BOMを基軸(INDEX)とした技術情報管理の高度化に伴う再構築)」

トレーサビリティに関する市場の要求などに伴い、BOMに関連付けた図面、CADデータ、原価情報、重量情報、設計変更情報など技術情報管理の高度化が必要となります。(図1)

(図1)技術情報例
4)「図面文化からの脱却(デジタル化)に伴う再構築」

図面には形状情報、BOM情報、製造情報、作業指示情報、変更情報など多くの技術情報が含まれており、一括で管理できるという長所がある反面、再利用や効率化による製品開発のスピードアップを行うためのデジタル化の阻害要因ともなっています。そのため、これらの情報を適切に分離し、BOMによる手配精度、スピードアップを図る必要があります。

5)「企業間提携・合併に伴う再構築」

近年、キーワードとなっている企業間(異業種を含む)での提携・合併では、部番の違いをいかに効果的に吸収していくかが大きな命題です。提携・合弁内容の密接度にもよりますが、部番交換の仕組みは必須となります。(図2)

(図2)部番の違い例
6)「法規・国際標準準拠に伴う再構築」

同一製品をグローバル市場で販売していくことが当たり前となっています。そのため国別、地域別に異なる法規に準拠した開発、製造、販売が必須です。BOMではこの差異を管理していくことが必要となります。また、エンジニアリングにおいては、各種国際標準への準拠も必要です。(表2)

環境関連(排出ガス規制、環境負荷物質規制、リサイクル法など)
安全関連(安全基準、保安基準など)
国際標準(ISO10303、ISO26262など)
(表2)国別法規と国際標準例
7)「設計部品表と生産部品表の接続性に伴う再構築」

グローバル化の進展に伴い、複数拠点での生産が必然となっています。また、市場のニーズの変化、さらには自然災害等により、生産拠点を迅速かつ円滑に移転できる仕組みの重要性が高まっています。一方で、役割の違いから設計部品表(E-BOM)と生産部品表(M-BOM)の接続は容易ではありません。そのため、この課題を克服し、情報伝達の精度アップやスピードアップを目的とした改革が必要です。(表3)

領域 構成要素
E-BOM(製品構成) 1.製品別・機能別構成
2.親部番、子部番、図面との紐付け
M-BOM(製造構成) 1.製品別・工場別構成
2.工順別構成(プレス、溶接、塗装、組立など)
3.副資材(油脂類、シール類など)、包装材など追加
(表3)設計部品表と生産部品表の違い例
8)「多品種少量生産、多様性への対応に伴う再構築」

市場ニーズや技術進化(ソフト化)により、製品は多様化し、多品種少量の生産が主流になってきています。そのため膨大な製品バリエーションの管理に耐え得る仕組み(BOM)が必要になります。

一方、エンジニアリングの観点からは、標準化や再利用性を高めることが期待され、モジュール化設計などによるQCDの向上が期待されています。業務の流れ自体が大きく変わり、そこで扱う仕組みも見直して行く必要があります。

BOMの特徴

前述のように、BOMの再構築の理由は様々であり、かつ複合的に発生します。

ご存知の通り、BOMは企業の上流から下流まで一気通貫で利活用される情報基盤であり、最重要な情報システムの一つと言えます。それが故に、BOM再構築による関連部門への影響も大きく、合意形成が重要なプロジェクトとなります。従って、企業間や部門間での越えるべきハードルが数多く発生し、その進め方が肝要になってきます。

ここでは、一気通貫で活用されるBOMの「つながる」観点での特徴を述べます。

1)業務のつながり

設計情報の束でもある製品を設計変更する場合、設計情報の更新を起点に、設計者の意図・意見をいかに効率的に生産に反映させるかが肝になります。これは、設計部門が作成した設計情報を、生産部門で効率的にして正しく製品に転写させる、その精度と密度によります。

また、設計情報の伝達は、生産部門だけでなく工場内の資材、調達、購買、品質管理といった各部門にも伝達され、各々のBOMに必要な形として格納されていき、企画、設計、生技、生管などの各部門で活用することで経営管理に役立てることができます。その情報を集約し制御する中核がBOMとなります。(図3)

(図3)BOMの位置付け
2)データのつながり

国際標準化、モジュール化の進展、組み込みソフト管理といった新たな要件も取り入れ、つながるものづくりの方策を検討することは大きな命題です。設計情報・CAD~工程設計~生産管理~サービス、原価といったデータをいかに効率的に管理し、アクセスが容易でタイムリーに取り出せるかが重要となります。そのため、BOMが全技術情報を管理する重要な要(INDEX)となり、品目名や部品名、部番で検索し、簡単に情報を入手できる仕組みがあれば、より一層BOMの使い手が増え、企業全体の全体効率が上がります。

3)企業間のつながり

昨今では、同業種だけでなく、例えばEV車に見られるように他業種のメーカーが参画した異業種間でのアライアンスも主流となってきています。

BOMは、ものづくりのあらゆる工程に関わるシステムであるため、BOM再構築の取り組みは、製品開発業務に関する課題のみならず、アライアンス間の言語や文化、業務の差によって生じる障害や問題、課題といったものも、全社をあげて解決していくことにもつながります。

4)時間のつながり

ものづくりの現場では、構想や設計といった上流に多くの時間を取られることから、必然的に下流側に負荷がかかりがちです。手配をはじめとする業務を自動化し、フロントローディングする仕組みができれば、上流のリードタイムも圧縮され、結果として下流の負荷も軽減されます。

標準、オプション、カスタマイズといった製品ラインアップがありながら、実際には都度受注生産が製造の大半を占めるような負荷が高い現場では、標準化、共有化が実現できる仕組みに見直することで設計・生産の負荷を減らし、その工数を新たな製品開発や新技術の研究に振り向けることも可能です。

さらに、受注予測は困難で、短納期で見込み生産をする必要があるため、常に在庫が大量に存在する現場であれば、共用化率を上げる仕組みを組み込むことで、部品種類を削減し再利用できるような業務へ改善を図り、モジュール化に取り組む検討を進めることが可能です。

BOM再構築プロジェクト立案のポイント

一般的に情報システムは、①構想・企画、②要件定義、③システム構築、④保守運用というプロセスに沿って開発されます。

構想・企画フェーズでは、Ⓐ 目的、目標の設定、Ⓑ 現状分析、Ⓒ解決策の策定、Ⓓ計画立案といった流れで推進します。(図4)

(図4) 「構想・企画」のフロー

BOMも同様ですが、前述した「なぜBOM再構築を図るのか?」および「BOMの特徴」が複雑に影響しあい、プロジェクトの進展に伴って「ブレ」が生じやすいのも実情です。

従って、迷った場合に戻る場所を設けることが重要であり、それがプロジェクト立案(目的、目標の設定)と考えます。

BOM再構築の“目的や目標”にブレが生じる原因としては、以下のような事が想定されます。

1)BOM再構築を進められるお客様の工数不足

市場環境の変化から、開発期間短縮、コスト削減、品質維持・改善が至上命題となる中、少子高齢化の影響から慢性的な要員不足の状態にあります。

結果、お客様の業務部門、IS部門それぞれの組織において、深刻な工数不足が発生しています。

2)新業務の不透明性

製品のデジタル化(ソフト化、IoT)、モジュール化設計、企業間アライアンスなどといった、ひと昔前には馴染みのなかった事象が頻発しており、試行錯誤的に業務改革しながら進めざるを得ない状況にあります。

3)全部門を見越した最適解が描けない

各部門の業務も複雑化しているため、全部門均一に負荷を下げ、効率化するような最適解が描き難くなっています。

しかしながら、BOMは全社、全部門に影響を与える基幹システムであり、End to Endでの保証が大前提となるため、局所最適ではなく全体最適が使命となります。ここに部門間の利害衝突が生じます。

このように今までにない変化が各所で起き、一長一短にあるべき姿を描きづらいことから、BOM再構築は年々困難なプロジェクトになっています。

以上の背景も踏まえ、BOM再構築プロジェクトの“計画立案”では以下が不可欠なポイントと考えます。

1)トップ方針(Top Down)での推進(最重要)

BOM再構築は全部門に影響することから、限られた部署や局所課題のみを解決するだけではなく、全体最適を図ることが前提となります。

問題を解決するには、経営トップがBOM再構築を推進するための専従組織の編成と実施推進の大号令をかけ、その組織の担当者に相応の権限を付与することが重要です。

2)プロジェクト目標の設定

プロジェクト推進において、迷いや混乱が生じた場合にはプロジェクト目標に戻って、軌道修正を図る必要があります。

そのためにも、例えば魅力ある製品によるシェアアップ、グローバル化を踏まえた拡大による収益増加、安全性と品質を確約したQCDの向上などの経営課題と、前述した「なぜBOM再構築を図るのか?」という目標を明確に連携させておく必要があります。

3)プロジェクト体制の構築

各部門のステークホルダーの参画が必要です。体制を特定の業務部門に限定して、IS部門中心で推進するのではなく、会社全体をBOM再構築という同じベクトルに向かう体制作りを図り、全社活動として推進することが重要です。

おわりに

弊社では、最新の市場状況も踏まえ、お客様毎の要件を満足するBOM構築およびBOM周辺システムの構築に向けて、コンサル、開発、運用保守のサービスをご提供しています。プロジェクト推進では、ウオーターフォール型の開発だけでなく、アジャイル型の開発にも取り組んでいます。

弊社は、お客様の組織内のつながるものづくりの実現から、企業間や社会に向けたつながるものづくりの実現に向けたご支援も行います。まずはご相談からお気軽にご用命いただけると幸いです。

(BOM技術ソリューション部 次長SE 首藤)
このページの上へ