DIPROニュース

2018

2月号2018.2.13 公開

タブレットによる製造現場での3D活用
~サノヤス造船様 DIPRO VridgeR導入事例紹介~

DIPRO VridgeR(以下VridgeR)は、超大規模フルアセンブリでも軽快かつ高精度に扱える技術を活かして、航空機や自動車、建機、造船業界といったさまざまな業界のお客様で活用範囲が広がっています。また、VridgeRはコア技術のみならずCADコンバータも含めて自社開発しており、お客様の基幹システムとの連携なども容易にカスタマイズ可能です。

今回は、サノヤス造船(水島製造所)様における、造船の建造現場への3D活用事例をご紹介します。

サノヤス造船株式会社サノヤス造船株式会社
本社 : 大阪市北区中之島三丁目3番23号
創立 : 平成23年10月3日 (明治44年4月 佐野安造船所創業)
代表者 : 代表取締役社長 上田 孝
資本金 : 20億円 (サノヤスホールディングス株式会社 100%出資)
事業内容 : 船舶・舶用諸機械・タンク類およびその他の鉄鋼構造物、機械器具装置の設計、製造、販売、修理、保守および保全事業
ホームページ : http://www.sanoyas.co.jp
主な製品 (ホームページより)
主な製品(ホームページより)

サノヤス造船株式会社(以下、サノヤス造船)様は、「まごころこめて生きた船を造る」を社是とし、造船技術の最先端を行く卓越した技術力と高い現場力を最大限発揮して、お客様に信頼される高品質なものづくりを行っている、100年以上の歴史を持つ造船メーカーです。

初めてサノヤス造船様にVridgeRをご紹介したのは2009年秋のことでした。当時、VridgeRは自動車や航空機業界で採用された理由である『CADでは到底扱いきれない超大規模アセンブリを扱える』という強みを活かし、造船業界へのご提案を模索していました。
しかし、当時はサノヤス造船様のメインCADからVridgeRへのダイレクト変換ができなかったため、ツールのご紹介止まりで、ご提案には至りませんでした。

本格的な検討は2012年サノヤス造船様のメインCADがISO国際規格であるJTフォーマットの出力に対応したことをきっかけに一気に進みました。JTフォーマット経由で3D CADデータを読み込み、大規模船舶データでも十分ストレスなく扱える性能が評価され、VridgeRが2013年1月に正式導入されました。

導入の際には、3D CADモデルから出力されるJTに標準で含まれている情報に加え、必要な属性の追加取り込みや、船殻(船の骨格と外郭)・艤装(配管など船の運航に必要な設備)それぞれに合わせた部品名称変更やツリー組み替え等、一部追加カスタマイズにてサノヤス造船様の運用に合わせたデータ変換システムを構築しました。


建造現場における3D活用への取り組み

導入されたVridgeRは設計部門でのレイアウト確認等への利用から始めましたが、設計システム革新チーム課長:国貞様の狙いは製造現場での3D活用でした。CADを利用している設計部門と違い、基本的に紙図面を利用している現場ユーザーの3D移行を進めるためには余計な機能は要らない、ユーザーが使う機能だけをシンプルに操作しやすく提供すべきと考えられました。その点標準版のVridgeRでは少々機能が多すぎるのが課題でした。また、この検討と並行し、現場で3Dを参照するためのツールとしてタブレットを導入するとともに、工場内の一部エリアに無線LANを導入、手軽に3Dを持ち運べる環境の整備を進められていました。

国貞様からのご相談を受け、VridgeRがご提案したのは『ACT版VridgeR』を使ったカスタマイズでした。EXCELやInternet Explorer上で動くライセンスフリーの『ACT版VridgeR』を利用し、ユーザーが使いたい機能だけをボタンで配置しタブレット用にカスタマイズします。『ACT版VridgeR』の専用フォーマットファイルは、Pro版VridgeR本体の標準機能で出力できるように対応しました。さらに、メンテナンス性を考慮し自社でカスタマイズしたい、というサノヤス造船様のご要望にお応えし、ACT版VridgeRのAPIを整備、公開して開発に協力させていただきました。 

ACT版VridgeRはタブレットやEXCEL連携など、用途に応じた画面のカスタマイズが可能です

サノヤス造船様におかれましては、グループ会社である㈱サノテック様が社内システム構築・メンテナンスを行っており、VridgeR導入時のサノヤス造船様社内システムと連携したカスタマイズの際もご協力をいただきました。

タブレット上で動くサノヤス造船様専用のVridgeRは弊社が提供したAPIを使ってサノテック様が開発されました。定期的な進捗会で情報共有いただき、
「パイプを触ったら系統(繋がった配管全体のこと)をハイライトさせたいがやり方はありますか?」
「パイプはアセンブリ化されていますから、VridgeRの親階層を選択する機能を使えばできます、 APIを追加しましょう」
というように臨機応変にフォローさせていただきながら、実運用を楽しみにしていました。

また、ユーザー展開前までに、3D CAD→JT→VridgeRデータの自動変換システムも構築され(弊社も一部を受託開発)、ユーザーがいつでも必要なデータをサーバから取り出せる環境を整えました。


タブレットによるVridgeR活用現場

タブレットによるVridgeR活用現場
 2016年より試験的に、2017年から本格的に現場タブレットへVridgeRを導入し、まずは紙図面の補助として活用を開始しました。

タブレットでは形状、組み付け状態や配置の確認、部品の属性参照といった基本的なオペレーションはもちろん、部品名検索(ワイルドカード指定も可)や系統のハイライト表示も簡単な操作で行えます。

ユーザー様に紙図と比較した優位性をお聞きしたところ、
「複雑な配管が奥に重なっているような、断面図だと表しきれない箇所も簡単に把握できるところですね。あとはやっぱり部品検索。どこにどうついているかがすぐ見つけられる」
といった視認性の良さを一番に挙げられました。

端材で作られた、絶妙な角度のお手製スタンドに置かれて大事に使われているタブレット
端材で作られた、絶妙な角度の
お手製スタンドに置かれて
大事に使われているタブレット

フリーのViewerを使っていた時期もあるそうですが、VridgeRはデータの読み込みも速く、表示も軽くてスイスイ動くのでストレスがない、とのこと。特に若手の方にとっては図面より簡単にレイアウトを把握しやすいVridgeRはなくてはならないツールになりつつあるようです。

現在タブレット端末は1班につき1台の割合で5台程度が配付されていますが、今後は利用状況を見ながら増設を検討しているそうです。

まだ正式運用を開始してから数か月のため、具体的な効果はこれから明確化していく段階ではありますが、既に現場ユーザー様からは
「検索で対象部品が奥にあった場合、手前の部品がかぶさって見えにくい時がある。周辺部品だけ半透明にしてほしい」
「検索で文字入力するのが面倒。音声入力に対応して欲しい」
など、具体的なご要望も挙がってきています。

こういったユーザー様からの貴重なご意見を元に、さらに現場で使いやすいツールを目指して改善していきたいと思います。


今後

国貞様は「まず3Dを現場に定着させる手段として今回はタブレットを選んだけれど、これが正解と決めたわけではなく、引き続き現場の声を聴きながら改善を続けていくつもりです。

将来的にはVridgeRを設計と生産、製造現場とのコミュニケーションツールとして、いろいろな情報を連携させたい」

例えば3Dモデルと一品図(紙図、pdf)との関連付け。

また、現状、電話や写真、現場に行く・・・といったアナログな手段に頼っている、現場から設計へのフィードバックのプロセスもデジタルを使って改善していきたい。

今回のタブレット活用も新設計船プロジェクトで行えばさらに効果が期待できる。将来的には、3Dモデルを中心とした設計・建造プロセスを確立させたい。

・・・・など、まだまだやりたいことは山積しているようです。

私どももVridgeRのコア技術を最大限に活用し、造船業界における3D活用にさまざまな形で寄与できるよう、今後もご協力させていただきたいと思います。

サノヤス造船国貞様、サノテック金高様
向かって左:サノテック金高様、右:サノヤス造船国貞様

(3D技術ソリューション部 課長SE 菅井)
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